第三王子の婚約者~内戦状態の母国から生き延びるため隣国へ送られた王女はそこで出会った王子と恋をする~
第2話
「ノア、寂しいわ。私はどうすればいいのかしら」
言われたように、彼の背中にしがみついた。
「すまないアデル。だけど僕は、どうしても行かなくちゃいけないんだ」
ノアは私を抱き寄せると、ギュッと手を握りしめる。
「君も一緒に連れて行ってやりたいが、そうなると、どうしても費用がかさんでしまう。悪いがそれは出来ない」
「えぇ、ノアさまのことを思って、毎日を耐え忍びお待ちしております」
「ダメ、早い。もうちょっとゴネて。やり直し」
「……。どうして私を一緒に連れて行くと、おっしゃってくださらないの?」
「ダメだよアデル。男ばかりの調査隊なんだ。そんなところに君なんかを連れて行ったら、お風呂とか覗かれてしまう。そんなの僕が耐えられない!」
「お風呂のぞきに来るの?」
「例え話だよ。ハイ、もっと続けて」
「……。え~っと。寂しいわノア。あなたと離れて暮らすなんて、考えられない。そんなことに本当になってしまったら、私の心は散り散りになってしまいそう」
ノアはウンウンとうなずいて、そのまま動かない。
私はこれ以上セリフを思いつけないので、そのまま腕に抱かれている。
その様子を、壁に並んだ侍女たちやエドガーが眺めていた。
恥ずかしい。
やがて彼は耳元でささやく。
「手紙。アデル、手紙書いてって言って」
「手紙を……、書きます。私も書くので、ノアさまも書いていただけますか?」
「もちろんだよアデル。忙しくしていても、心配しないでくれ。暇を見つけたら必ず君に手紙を書く」
「ありがとうございます。それならわた……!」
唇を押しつけられる。
息が苦しいのに、なかなか離してくれない。
ようやくそれが離れたと思ったら、再びノアは私を抱きしめた。
「ゴメンね、アデル。君に寂しい思いをさせたいワケじゃないんだ。僕も寂しいけど、これが終わったら、僕の誕生日はすぐそこだ。そしたら僕は……」
エドガーがコホンと大きな咳払いをした。
「ノアさま。そろそろお戻りにならないと」
彼の言葉を無視して、ノアは私の顔をのぞき込んだ。
「そうだ。出発するまでの数日間は、僕はこの館に寝泊まりすることにしよう。名案だ。そうすれば僕ももう少し君のそ……」
「ノアさま。帰りますよ」
「あぁもう、うるさいな。エドガーのおかげで帰るタイミングを逃した。今夜はここで泊まることにするから、そのようにては……」
バタンと扉が開いて、負のオーラを全身に纏ったセリーヌが姿を現す。
「ノアさま。お帰りを」
「なんだ、セリーヌか! 君が居てくれるから、アデルは助かってるよ。安心して任せられる。そうかそうか。ならよかった! じゃあやっぱり僕は帰るとしよう」
ノアは何だかんだ言っても、やっぱりまだセリーヌの迫力には敵わない。
ようやく握られていた手が離れたかと思った瞬間、頬にチュとキスをした。
「また来る」
それからのノアは、毎日のように小さな緑の館に顔を出し、何だかんだとゴネてはセリーヌとのにらみ合いを続けた。
いよいよ出発が明日へと迫った日、私はノアと最後の夜をすごすため、お城へ呼ばれる。
客間の一つに丸テーブルが置かれ、二人きりの食事が用意されていた。
静かな晩餐が続く。
言われたように、彼の背中にしがみついた。
「すまないアデル。だけど僕は、どうしても行かなくちゃいけないんだ」
ノアは私を抱き寄せると、ギュッと手を握りしめる。
「君も一緒に連れて行ってやりたいが、そうなると、どうしても費用がかさんでしまう。悪いがそれは出来ない」
「えぇ、ノアさまのことを思って、毎日を耐え忍びお待ちしております」
「ダメ、早い。もうちょっとゴネて。やり直し」
「……。どうして私を一緒に連れて行くと、おっしゃってくださらないの?」
「ダメだよアデル。男ばかりの調査隊なんだ。そんなところに君なんかを連れて行ったら、お風呂とか覗かれてしまう。そんなの僕が耐えられない!」
「お風呂のぞきに来るの?」
「例え話だよ。ハイ、もっと続けて」
「……。え~っと。寂しいわノア。あなたと離れて暮らすなんて、考えられない。そんなことに本当になってしまったら、私の心は散り散りになってしまいそう」
ノアはウンウンとうなずいて、そのまま動かない。
私はこれ以上セリフを思いつけないので、そのまま腕に抱かれている。
その様子を、壁に並んだ侍女たちやエドガーが眺めていた。
恥ずかしい。
やがて彼は耳元でささやく。
「手紙。アデル、手紙書いてって言って」
「手紙を……、書きます。私も書くので、ノアさまも書いていただけますか?」
「もちろんだよアデル。忙しくしていても、心配しないでくれ。暇を見つけたら必ず君に手紙を書く」
「ありがとうございます。それならわた……!」
唇を押しつけられる。
息が苦しいのに、なかなか離してくれない。
ようやくそれが離れたと思ったら、再びノアは私を抱きしめた。
「ゴメンね、アデル。君に寂しい思いをさせたいワケじゃないんだ。僕も寂しいけど、これが終わったら、僕の誕生日はすぐそこだ。そしたら僕は……」
エドガーがコホンと大きな咳払いをした。
「ノアさま。そろそろお戻りにならないと」
彼の言葉を無視して、ノアは私の顔をのぞき込んだ。
「そうだ。出発するまでの数日間は、僕はこの館に寝泊まりすることにしよう。名案だ。そうすれば僕ももう少し君のそ……」
「ノアさま。帰りますよ」
「あぁもう、うるさいな。エドガーのおかげで帰るタイミングを逃した。今夜はここで泊まることにするから、そのようにては……」
バタンと扉が開いて、負のオーラを全身に纏ったセリーヌが姿を現す。
「ノアさま。お帰りを」
「なんだ、セリーヌか! 君が居てくれるから、アデルは助かってるよ。安心して任せられる。そうかそうか。ならよかった! じゃあやっぱり僕は帰るとしよう」
ノアは何だかんだ言っても、やっぱりまだセリーヌの迫力には敵わない。
ようやく握られていた手が離れたかと思った瞬間、頬にチュとキスをした。
「また来る」
それからのノアは、毎日のように小さな緑の館に顔を出し、何だかんだとゴネてはセリーヌとのにらみ合いを続けた。
いよいよ出発が明日へと迫った日、私はノアと最後の夜をすごすため、お城へ呼ばれる。
客間の一つに丸テーブルが置かれ、二人きりの食事が用意されていた。
静かな晩餐が続く。