この恋に名前をつけるなら
「え!あーー行くわけないじゃん!」


俺は落ち着かない様子で結空に嘘をついた。



あの日、プロポーズ丘公園で待ってたなんて、ダサくて惨めで言えない。




「やっぱりそうだよね……もう昔のことだもんね」


結空は顔を曇らせながら作業をしていた。



「うん。時間も経てば気持ちが変わるよ、はは」


仁くんは苦笑いをしていた。



「だね。あの……仁君は今いるの?」



「何が?」



「彼女さん」



「え!あーーいるよ」


何故、見栄を張ったのかは知らないが、

また嘘をついてしまう。


今、俺に彼女なんていなかった。


結空は俺の言葉に肩を落とす。



「そっか……仁君の彼女さんだから綺麗でモデルさんみたいな人なんだろうね」



「う、うん?そうだよ……俺より結空こそどうなんだよ」



俺はもの凄く気になった。


彼女の容姿を知っているかのような言い方に。



「え!私?いないよ……でも、つい最近別れたんだ」
二人は目が合う。



「そっか……」


すぐに二人は目を逸らし、沈黙が続いた。


空気を変えようと私は口を開く。



「あれから大変だったんだよね。就職して……一人暮らして」



「そうだよね……あれからお母さんとは?」



「もう全然会ってないよ。お父さんは『いつでも帰っておいで』って言ってくれてるけど私は今のままでいいから」



「結空は相変わらず凄いね。いろいろ頑張ってて」



「そうかな?」



「うん」


二人はしばらく高校時代の話しや卒業してからの話しで盛り上がった。
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