この恋に名前をつけるなら
「ありがと」


俺はスマホが入った袋を受け取り、帰ろうとしていた。



「うん。仁君にまた逢えて良かった」


私は仁くんの顔を見て微笑んだ。



「俺も……」



「彼女さんとお幸せに」



「う、うん。あのさ……」


俺はあの日、プロポーズ丘公園のことについて聞こうとした。



何故来なかったのか?


最後にどうしても聞いときたかった。



「うん?」



「その……何であの日……」


俺が結空に聞こうとした瞬間、男性の声が……



店長だった。




「木栖さん、ちょっといい?」



「はい。ちょっと待って下さい!今行きます。ごめんね、それで?」


私は店長に言った後、仁くんに尋ねた。




「あっいや、何でもない。仕事頑張って!」


俺は結空に手を振り、店を出る。



「う、うん。じゃあね」


私は仁くんの背中を見届けた。



「木栖さんまだーー?」


店長が私を急かす。



「はーーい」


最後、仁くんが言おうとした言葉が気になったが、私は慌てて店長の元に行った。



俺もまた、あの日のことを聞けず、

複雑な心境で帰ることに。


また会いたいではなく、

もう会わないだろう。


俺はそう思った。



もう結空は自分に気持ちがないのだから。





だって……



あの日、プロポーズ丘公園に来なかったのだから。
< 104 / 166 >

この作品をシェア

pagetop