この恋に名前をつけるなら
「仁は絶対に松本さんと付き合った方がいいって。これ松本さん」 


海斗は俺達にスマホから本人の写真を見せる。



「へーー美人だね。一個上に全然見えない」


中島さんは写真を見て言ったが、俺は反応がない。



「あれ?もしかしてタイプじゃない?」


中島さんは俺に尋ねた。



「え?あっまぁ……可愛いと思うよ」



俺は少し戸惑いながらビールを飲む。



「だろ?『出会いがないから紹介してくれ』って松本さんが言うから」



「ちょっと!松本さんが美人だからって毎日仕事中、鼻の下を伸ばしてるんじゃないでしょうね?」



中島さんは頬を膨らませながら、海斗を問い詰める。



「いや、そんなことないって!」



「ホントに?」


海斗達を見て俺の顔から笑みがこぼれる。



「ホントだって!あっそう言えば聞いてくれよ、莉緒。こいつさーー。久しぶりに結空ちゃんに会ったんだってさ」



海斗は俺を指差しながら話しを変えた。



「おい!言うなって、それ!」



俺は嫌な顔をした。



「え!結空ちゃんって付き合ってた子でしょ?」


中島さんが興味津々で俺に尋ねる。



「そうそう、こいつら別れた四年前にさ……プロポーズ丘公園で会うことを約束したのに、結空ちゃん来なかったんだぜ、はは」



海斗は酔っていた。


ビールを飲み干す。



「約束か……え!もしかしてあの日?」



中島さんは四年前に俺と会った日を思い出す。



「あーそうそう。坂道であったよね」



俺は答える。



海斗は二人の会話を聞いていた。 



「え!待って!あの日……」


中島さんは口に手をやる。



少しだけ空気が変わったのが分かった。



「どした?」



海斗は莉緒に尋ねる。



「あの日、見たの!」



「え!何を?」



俺は変な胸騒ぎを覚えた。



「私、夜に友達と遊び終わって、帰り道にすれ違ったの!プロポーズ丘公園の坂道で……」



俺は目を見開き、中島さんを見つめる。



「誰に?」


海斗は何も気にせず、また尋ねた。
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