この恋に名前をつけるなら
その瞬間、三人は酔いが覚め、

息をすることさえ忘れていたのだろう。


呆然とし、口を閉じることができなかった。



俺の顔色は青ざめている。


あの日、遅れはしたもの結空は来ていたことを知らされ、俺は固まっていた。



「嘘だろ……」


結空についた嘘を思い返し、俺は焦っていた。



「ごめん……もっと早く言ってあげてたら」


中島さんは涙目になる。



「いや、中島さんは悪くないよ。教えてくれてありがと」



俺は感謝する。



「入れ違いってことか」



海斗は呟いた。



「俺さ……結空に嘘ついたんだよね。あの日行かなかったとか今彼女いるとか。自分のことをカッコ悪く見せないように……結空の気持ちも考えずにさ。ホント俺バカだよね?」


俺の気持ちは沈んでいた。



「おい、何してんだよ!早く行ってこい」



海斗は両手で机を叩き、立ち上がった。



「え?」


俺は海斗の行動に愕然とした。



「ここにいたって仕方ねえだろ?早く会って来い!そんで、自分の気持ちを正直に伝えろ……後悔するぞ!まだ少しでも好きなんだろ?」



「え?あ……うん」



「だったら行って来いよ!お前が幸せそうにしてないと、俺もつまんねえからさ。ほら!」



海斗の真剣な態度に心を打たれる。



「一ノ瀬くん、頑張れ!」



中島さんも俺の背中を押す。


お店の壁掛け時計で時刻を確認すると午後7時半。



まだ間に合う。



「……ありがと、ちょっと行ってくるわ!」


まだ結空は職場にいるだろう。


俺はそう思い、急いでお店を飛び出した。
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