この恋に名前をつけるなら
次の日、私はスタッフルームで、思い出すかのように大きな声をあげていた。
「あーー!」
私の声にびっくりしたのか、同僚の美優が慌ててスタッフルームに入って来る。
就業前ということもあって、静けさに包まれていた。
「どしたの?なんかあった結空!」
美優は目を見開きながら私の様子を伺う。
「あっごめん……聞いとけばよかったと思って」
「何を?」
美優は私の隣に座り、私の話を聞いた。
「えっと、昨日ね……仁くんの友達とすれ違ったの。それで仁くんの連絡先知ってるはずだから、その時に仁くんの連絡先教えてもらえば良かったのにと思って」
昨日、私は中島先輩とすれ違うが、
仁くんと逢えなかったショックで、
そんなことを考える余裕もなかった。
「あちゃーー。それは聞いときたかったね」
「気が動転してたし……でも、どっちにしろ話せなかったかも」
「え?何でよ!」
「だって顔も服も汚れてたから恥ずかしくて話しかかけられないよ」
私は涙で化粧が崩れ、履いていたズボンも砂で汚れていたのだ。
「そっか……こうなったのも全部、私のせいだもんね。ホントごめんね」
突然、美優の顔色が変わる。
鈍感な結空もすぐに察し、
重たい空気を変えようとしていた。