この恋に名前をつけるなら
「何回も謝らないでよ!あれは仕方ないよ。他に連絡取れる方法を探すから」



「ホントごめんね。」


美優は罪悪感からか、私のために何か力になりたかった。



「大丈夫だって!気にしなくていいから。お母さん無事でよかったよ」


私は美優を落ち込まなさないように、気丈に振る舞う。



「うん。でも……何で大事な日に熱中症になるかな、うちのお母さん」



「え?でも、昨日もの凄く暑かったもん。仕方ないよ」



「そうだけどさ……はあ。そう言えば大学生だったけ?」



「うん。そうだ……よ。あ!」


美優からの何気ない質問に、私は見落としていたことに気がつく。


私は表情が緩み、気づいて時には笑顔になっていた。



「あれ?結空、どうした?」



「そっか!美優ありがとう!」


私は美優の手を握りしめ、興奮気味に抱きつく。


美優は状況が読み込めず、固まっていた。



「え?え!何が?」



「だって、仁くんの大学に行けば逢えるじゃん!」


仁くんは高校卒業後、広島の大学に進学していた。


仁くんの行っている大学は私も知っている。


私は大学に行けば仁くんに逢えると確信した。



「あ!確かに」



「私、お金貯めて広島行く」



私は今すぐにでも飛んで逢いに行きたいところだが、焦らず仕事に専念することにした。



「今度こそ逢ってよね」


美優は願い、祈ることしかできないが、

一番気にかけていたに違いない。


私と仁くんが幸せになってほしいと。



「うん。ありがと」



私はいつ逢いに行けるか分からないが、

少しだけ気が楽になった。


私と美優は開店作業に取り掛かるため、

スタッフルームを後にした。
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