この恋に名前をつけるなら

その後、逢えなかった私はお金を稼ぐため、必死に働いていた。



なぜなら、仁くんが通っている広島に行き、仁くんに逢うためだ。



内緒でバイトも始め、朝から夜まで多忙な日々。そのせいか、仕事中に寝てしまうこともしばしばあった。



忙しいピークを過ぎた、ちょっとした合間にうたた寝をしてしまう。



「木栖さーーん、おーい!木栖さん」
店長の声で目が覚める。



「はい。何ですか?」



「今、寝てたよね?」



「え?いーえ、寝てません。ね、寝るわけないじゃないですか」



「え?そう……ならいんだけど」
私の強気の姿勢に、勘違いだったのかと、店長も気まずそうに引き下がる。



だが10分後、

「木栖さーーん、おーい」
また店長の声。



寝ている私が悪いのは分かるけど、どうにかならないの。店長の声質が嫌だった。



私は寝てませんアピール全開で、キーボードで文字入力をする。



「木栖さん、もう無理だよ。そんなにタイピング早くないよね?寝てたの知ってるから」



「え?寝てませんけど、何言ってんですか?」
私はシラを切り、タイピングの速度を上げる。



「いやいや、早い早い。タイピング早すぎない?」



「え?何のことですか?」
隣で聞いていた美優も思わず笑っていた。最近はこんな感じ。仕事中に寝てしまうことはあるけれど、1日でも早く逢えるよう寝る間、惜しんで仕事を頑張っていた。



こんなに頑張れるのは仁くんの存在が大きいはず。生まれて初めてこんなに人を好きになり、ずっと一緒にいたいと思わせてくれた大事な人だから。あと少しで逢えると思うとニヤけが止まらなかった。
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