この恋に名前をつけるなら
それは、一人の女性が仁くんに近づき、仁くんと腕を組んでいるではないか。
楽しいそうに二人とも満面の笑みを溢している。
「今日は何作ろっか?」
「うーーん?この前食べたハンバーグ美味しかったから、また食べたいかな」
「ふふ。あれ、仁くんに好評だったもんね」
二人は笑いあい、幸せそうにするのを見て、私は状況を飲み込めずにいた。
私は我に帰り、仁くん達に気が付かれないように咄嗟《とっさ》に身を潜める。
自分だけが思い続けていた事に今更気付き、惨《みじ》めで辛い。
それに信じていた自分がバカバカしくて、悔しくて堪らなかった。
別の人と楽しく幸せそうにしているのを見て、心が痛く、とてつもなく息苦しい。
仁くんの幸せの中に、私が居ないことを受け入れるのに、しばらく時間がかかった。
あの日、プロポーズ丘公園に、
絶対に来たと思い込んでいたが、
二人の幸せそうな顔を見て考えが変わる。
あの日、プロポーズ丘公園に仁くんは来ていない。
そう自分に言い聞かせ、呆然と二人が見えなくなるまで目で追っていた。