この恋に名前をつけるなら
「落ち込むよねーー」


美優が仕事中、元気がない私を気にかける。



「……」


返答はないが、美優はタイピングしながら、また口を開いた。



「まさか……彼女作ってたとわ」



美優は呆れながら、私の顔を見る。



「美優?」



「うん?」



「私ってさ……そんな魅力ないかな?」



小さくため息を吐き、自分に自信を無くす。


まるで、抜け殻になったみたいに、動くことを忘れていた。



「はあ?いきなりどうしたの?」



「仁くんの彼女、大人びて綺麗な人だったからさ。私なんて全然良いとこないよね?」



「何言ってんの?結空には他の人にはない魅力を持ってるって」



美優は作業を止め、私を慰める。


自分にできることはそれぐらいしかなかった。



「はぁ……そうかな?」



「うん。落ち込むのはわかるけど元気出しな!いつまでも引きずったって仕方ないよ」



「分ってるけどさ!急には元気出ないよ」



「そりゃあ、そうだけどさ……いつまでも前の男のこと考えてても仕方ないないから、きっぱり忘れな!」



「うーーん?だよね……」



「うん。終わったらご飯でも食べに行こう!話、聞いてあげるから、ね?」




「うん」


私は仁くんを忘れるため、しばらく仕事に専念することにした。


時間が解決してくれるはずだと信じて。
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