この恋に名前をつけるなら

三日後、またいつものように、私は職場に出勤する。



正直、仕事が手につかないぐらい心と身体は限界だった。



「おはよう」



元気のない私は作り笑顔で、美優に挨拶をする。



「おはよう。え!どうしたの、そのアザ?また?」



美優は私の口元にあるアザを見て、また驚いた。



「あ!これ?今度は転けちゃった、はは」



美優は私の作り笑顔に、違和感を覚える。


何だか元気もないし、痩せこけていく私を見て、疑問を抱いた。



美優は勘違いであって欲しいと思いながら、急いで私の袖を捲る。



「え?」



美優は私の腕が、アザだらけで目を疑った。



私は美優と目が合うと、すぐさま目を逸らす。



「何これ?もしかしてあんた……」



美優は私のアザを見て確信した。



私が暴力をふるわれていることを。



「転けただけだから……大丈夫だって」



私はそれでも、惚けようとしていた。


美優は私を強く抱き寄せる。


私は頼る人がいなかった。



仲が良かった遥は県外で暮らしており、あまり友達がいなかった私は一人で抱え込んでいた。




「何で言わなかったのよ!もう頑張らなくていいから」



美優は強い口調で私に言った。



「え?」



「DVされてんでしょ?」



「え!その……」



「うちには嘘つかないで!友達でしょ!」



美優は強く私を抱きしめながら、頭を撫でる。


今はそれしかできないが、美優は私に寄り添った。



「ごめん……怖いの……た・す・け・て」



私の目から涙が溢れ落ちる。


今まで言えなかった言葉が言え、溢れんばかりの涙が、溢れ落ちていた。



「絶対許さない!」



美優は北斗を酷く憎んだ。


懲らしめないと気が済まない。


結空の涙を見て、尚更思った。



友達がこんな酷い目にあって、恨まない方がおかしい。
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