この恋に名前をつけるなら

「俺と付き合って下さい！」



「ふふ。お願いします」


私は満開の笑みで微笑む。



キミのことを考えてはいけない、

忘れないといけない。


長年、そう思い続けてきた。



それが、

今やっとキミのことばかり、

考えてもいいに変わる。



今日まで長く辛いことばかりだったけど、

やっと探していたものが見つかったみたいだった。



つい数秒前までは、

運命なんて信じていなかった。


別れた時に『運命の人ではなかったから別れたんだ』と、自分に言い聞かしていたんだと思う。



少しでも自分が傷つかないように、

少しでも自分を落ち着かすために……




正直、

また逢えるなんて思わなかったし、

こうして出逢えたのも、

運命に引き寄せられたんだと思うんだよね。



そういえば、

こんな話を聞いたことがある。


運命の人は二人もいるってことを……



一人だけではなく、二人もいるらしい。



一人目は愛する事や失う事を教えてくれる人。


二人目は永遠の愛を教えてくれる人。




本当に二人いるのかは分からないが、

仁と結空はお互いを運命の人だと確信した。


前までは運命なんて信じていなかったのに……




あの日、会えなかったけど……




時を経て、再会しまた結ばれた。　


これを運命ではないと否定する方が難しいよね。



今は『運命の人だから一緒にいるんだ』と思えた。




「あ！そういえば……これ」



私は仁くんに自分達がつけていた南京錠を渡す。



「え！これって？」


俺は目を見開きながら、自分達の南京錠を受け取った。



「もう逢うことないと思ったから、処分しようとしてたの」



「そっか、結空だったんだ……無くなってたからびっくりしてたんだ」


俺は一度、プロポーズ丘公園に来ていた。


南京錠を眺めていると、

自分達の南京錠がないことに気づく。


ダイヤル式だったため、誰かがいたずらで、外したのだろうと思っていた。



「ごめんね、またつけよう」



「うん」


俺はダイヤルを回し、南京錠を高台近くの柵にまたつける。



また永遠の愛を誓い、寄り添う二人。



私は仁くんの腕に頭を寄せながら、

思い出の曲を口ずさんだ。



俺も歌い出した結空と目が合い、一緒に歌い出す。



透き通った優しい歌声が、

心地よくさしてくれた。