この恋に名前をつけるなら
「ごめん、急に」


咄嗟に、仁くんの唇が私の唇から離れていく。


仁くんも少し顔を火照らせ、

私の目を見れないでいた。



「……うんん、嬉しい」


胸の奥から波立つドキドキに、

快楽を覚えながら、

私の唇は愛を知ってしまった。



「いちご?」


仁くんはボソッと口ずさみ、

何かを考え込んでいた。



「え?」



「いちご。あ……いちごオレ!」


仁くんは何かを思い出し、

私に向かって指を差した。



「え?いちごオレ?」


意味がわからない私は戸惑う。



「いちごオレの味がした」


唇を重ねた時、

ほんのり味がしたのだろうか。


仁くんは、つい言葉に出してしまった。



私の荷物の近くには、

いちごオレのジュースが……



「ちょっと、もうーー」


私は恥ずかしくて、

仁くんの背中を優しく叩いた。



「はは」


仁くんは私を見て微笑む。


体育館倉庫は二人だけの空間だった。



「ねえ?もう一回していい?」



仁くんが私に尋ねると、

目をゆっくり閉じて、

また二人は唇を重ねる。





二人以外誰もいない体育館倉庫で……
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