この恋に名前をつけるなら
爽快な音楽の響き。


ライトアップされた薄暗い部屋。


弾力のあるソファーが心地良い。



歌うのが好きな二人は、

よくカラオケに行くほどだった。


デートといえばカラオケ。


そのぐらい歌を歌うのが好きだった。



結空は歌を歌うのが上手い。


もの凄く上手く何回、

歌手になれば良いのにと思ったことだろう。


綺麗で透き通った優しい声に、

俺はいつも魅了されていた。



俺は結空ほど上手くはないが、

歌うのが好きだった。


二人は薄暗い部屋の中で、

カラオケを楽しむ。



「ふふ、そんな見ないでよ」


歌い終わり、結空は照れ笑いを浮かべていた。



「あーーごめん。つい聴き入っちゃった」


結空が一人で歌う時は、

いつもこんな感じだった。



ずっと聴いていられる優しい声。


それに、

結空の歌声を独り占めできる感じが、

俺にとって最高に堪らなかった。



「そんな見られたら恥ずかしいでしょ」



「だよね……ごめん」



「じゃあ次は、仁君の番だよ」


「え?」



「ふふ、次は私がたくさん聴いてあげる」


結空は揶揄うようにして俺を見つめる。



「いいって!……恥ずかしいじゃん」


揶揄う結空の表情を見て、嫌な顔をした。



「嘘だって。一緒に歌おう!」



「あ……うん」 



「じゃあ、仁君の好きな曲入れるよーー」


結空は曲を選ぶと、

よく一緒に歌う曲が流れ始めた。


この曲は二人の思い出の曲となり、

いつしか、

二人の着信音にまでなっていた。



「ありがと」


マイクを握りしめ、一緒に歌い出す。


目と目を合わせ、満面の笑みを浮かべていた。



部屋中に、

幸せな音色を響き渡らせながら、

二人は時間の許す限り歌い続けた。
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