この恋に名前をつけるなら
「その……」


俺は結空の傍に行くと、

何から話せばいいのか分からなくなり、

言葉を詰まらせる。



「……違うんでしょ?」


恐る恐る、結空は俺に尋ねた。



「え?」



「他に付き合ってる人がいるってこと。どうなの?」


結空は真実を受け入れる覚悟ができたのだろう。


しっかりと俺と目を合わせていた。



「信じて欲しい!俺は結空だけだよ」


俺は真剣な眼で結空を見つめていた。



「……分かってる。仁君はそんな人じゃないって。最初から信じてたよ。でもね……怖かった!連絡が来ないから……もう一生来ないかもって、不安になったじゃん!」


結空は嘘だと知り、安心したのか、

涙目になっていた。



「その…ごめん。誰だか分かんないけどさ……彼女の親にあることないこと言われて、挙げ句の果てには親に怒られる!凹《へこ》んだよ……さすがに……」


結空が信じていてくれたことに、

感謝しながら続けて口を動かす。



「謝ったら認めたみたいになるからさ。どうしていいのか……分かんなくなっちゃったよ。それに何て送ったら良いのか……」


俺は沈んだ表情で結空に言った。



「謝らなくていいよ。だって……してないんでしょ?」



「うん。絶対にしてない」



「良かった。ずっと、その言葉を聞きたかったから……」



「ごめんね、もっと早く話せばよかったのに、時間が経つにつれて話し辛くなってさ」



「もう別れるかと思ったじゃん、ふふ」
結空は俺の背中を強く叩き、小さく笑った。



「ごめん。俺もこんなんで終わったら、嘘ついた奴に負けた感じがして嫌だった。」


俺は怒りが込み上げてくる。



誰が何のために嘘の噂を親に流したのか?


邪魔だけはしてほしくなかった。



「良かった。元通りに戻れて」


結空は俺に飛びかかるようにして抱きついた。



「あっうん。海斗達に感謝しないとだね」


結空を受け止め、強く抱きしめる。


暗かった表情は今、

明るく笑みを溢すまでになっていた。



「だね!みんなに迷惑かけちゃうから早く練習始めよ」


私は皆を呼びに走って行った。



「う……うん」


二人の表情が笑顔に戻る。


二人の表情を見て安心し、

海斗と遥ちゃん達は微笑んだ。


やっと、いつもの日常を取り戻し、

誰もが喜んだ。
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