この恋に名前をつけるなら

「仁くん、はい!」

部活終わり、私は遥と一緒に仁くんのところにやって来た。


手にはオシャレに包装された箱。



今日はバレンタインデーだった。



「ありがとう」


仁くんは照れながら、私に感謝を伝える。


後ろから、羨ましそうに小田先輩がやって来た。



「あれ?結空ちゃん、俺のは?」


冗談なのか本気なのか、

分からないぐらい小田先輩の顔は真顔だった。



「何でだよ!」


仁くんは軽く、小田先輩の頭を叩く。



「何でって?俺だって欲しいよ!結空ちゃんから」



「あげるか!」


仁くんは強い口調で小田先輩に言った。



「いや、仁に聞いてないから!結空ちゃんに聞いてんの!」



「は?結空、あげなくていいから!」



「いや、ちょうだいよーー結空ちゃん!ね?」


仁くんと小田先輩は、しばらく言い争う。



そんな二人を見て、私と遥は笑い出した。



「二人とも何争ってんの?ふふ」


私は仁くんと小田先輩がムキになっているのが、可笑しくて堪らなかった。



「小田先輩は私があげる!はい、これ!」


遥は手に持っていたチョコが入った箱を小田先輩に差し出す。


突然のことに小田先輩は固まり、

物凄く照れていた。



小田先輩の照れた顔を見て、笑い出す三人。



「おい、何照れてんだよ!さっきまでの態度はどこ行ったんだよ、はは」


俺は腹を抱えて、小田先輩を揶揄う。



「アリガトウ……」


小田先輩は片言になりながら、遥からチョコを貰っていた。


また三人は小田先輩を見て笑い出す。



二人のチョコはとても甘く、

忘れられない美味しさだったに違いない。




とても甘いバレンタインデーだった。
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