この恋に名前をつけるなら
2011年4月。
青く澄んだ空の下、
桜の花びらが舞い、
公園は桃色で染まっていた。
綺麗に散りゆく花びらを眺めながら、
三年生になった俺はプロポーズ公園で、
誰かを待っている。
辺りは静かで、
プロポーズ丘公園は俺以外、
誰もいない。
すると、
そこへ遅れて誰かがやって来る。
やって来たのは結空だった。
「お待たせ。また告白でもしてくれるの?」
結空は微笑みながら、そう言った。
「いや……違うんだけどさ。これ見て!」
俺は持っていた物を結空に見せる。
「これって!」
結空は目を丸くした。
俺が持っていたのは南京錠。
プロポーズ丘公園の高台近くにある柵には、たくさんの南京錠がつけられており、俺も結空と一緒につけようと思っていたのだ。
南京錠をつけて永遠の愛を誓う……
カップルの定番であり、憧れでもあった。
「うん。一緒につけよう」
俺はボールペンを取り出し、
結空に二人の名前を書いてもらった。
二人の南京錠は三桁の数字を入れたら開く、ダイヤル式の物だった。
「ずっと一緒にいようね、ふふ」
結空は嬉しそうに微笑んだ。
「うん。番号はね……」
俺が言う前に結空が喋り出す。
「ふふ、記念日でしょ!」
結空は俺の表情を確認する。
すると、俺は照れ笑いを浮かべた。
「ふふ、図星ーー」
結空もつられて笑う。
「606っと」
俺は南京錠のダイヤルを回し、
南京錠を取り付ける。
二人は誓った……
『何年、何十年先もずっと、一緒に居よう』と永遠の愛を。