この恋に名前をつけるなら
結局、彼女は来なかった。


心を何かでえぐられたみたいで、

俺は深く傷つき、肩を落としていた。


1歩、2歩と足を動かした時、

女性の後ろ姿が……



あれ?もしかして?

女性は振り向き、こちらを見る。



なんだ、

知らないおばさんか……



おばさんは悪くないよ。

そんなの分かってる。

分かってるけど……



紛らわしいのに俺は腹を立てた。


いろんな感情が頭の中を渋滞している中、

待ち合わせ場所だった公園から出て行く。



彼女の目、鼻、口、そして小さな手。


鮮明に映し出される彼女の『残像』が、

俺を余計に苦しませていた。



いっそ記憶喪失になったら楽なのに……



このまま、記憶を消しさりたかった。


俺と彼女の『恋』は今日をもって、

終わりを告げた。



勿論、振られた訳ではない。


だけど、

ほぼ終わりと捉えていいだろう。
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