この恋に名前をつけるなら



「私にだけ冷たいし邪魔だとしか思ってない。だから私は居場所がなくて逃げ出したくなる」


私の目から涙が溢れ落ちた。



「そんな……」



「まだ高校生の私が逃げれる場所なんてないんだけどね。ふふ」


私が重たくした空気を、変えようとしてることに仁くんは気づく。


だが、

何て言葉をかけてあげれば良いか、

仁くんは言葉を探していた。



「ホント何で私が産まれてきたのか何回も考えた。でも、仁君に出会えて分かったんだ」



「え?」



「仁君と出逢うために産まれたんだよ。今は仁君がいるから毎日が楽しいし、頑張れる!本当に産まれてきて良かったって思う」



「俺もだよ……結空は俺なんかよりも強いね。一人で闘ってたんだから」



「そんなことないよ。だから……もう迷惑かけられないから、就職して一人暮らしするの」



「そうだったんだ……」


仁くんは私の手を握りしめる。



「ごめん、記念日なのに変な空気になったね」


仁くんは首を横に振り、私を抱きしめる。


抱きしめることしかできなかったのだ。



涙が止まらない私は仁くんに抱き寄せられたまま、仁くんの温もりを感じる。



そして、

仁くんは推薦入試が九月にあるため忙しくなり、

私と会える日が減っていった。
< 60 / 166 >

この作品をシェア

pagetop