この恋に名前をつけるなら
「どうした?」


俺は結空に尋ねる。



「あのね……私、仁くんのことが好き」



結空の突然の言葉に俺は動揺した。



「あ、ありがと……でも……」


俺が言う前に結空が喋り出す。



「分かってる。だから……私が卒業したら付き合うのとかダメかな?」 



「え?」



「私、卒業したら働く。親から離れて一人暮らしする……そしたら、仁くんとまた付き合える。ダメかな?」


結空は寂しそうな顔をした。



小田先輩から言われた『大人になったら大人の言うことなんて聞かなくたっていんだよ!』その言葉の意味に気がついたのだろう。



「プロポーズ丘公園……」


俺は小さく呟いた。



「え?」



「結空が卒業したら、6月6日、いつもの時間にプロポーズ丘公園で待ってる」



「え?わかった……」



「もし二人がまだ好き同士だったら、また結空に逢って告白するよ」


俺は結空に約束した。


連絡手段がない二人はこうするしかなかったのだろう。



「ふふ、絶対だよ」



私は微笑んだ。



「うん」


俺もつられて笑った。



「卒業おめでとう。大学頑張ってね」



私は仁くんを抱きしめた。


小さな身体から温もりを感じる。


本当に大好きでした。



「ありがとう」



そして、俺の高校生活は幕を閉じた。
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