この恋に名前をつけるなら
振り向くと、

陽光に照らされた栞先輩が笑顔で立っている。



手には昨日と同様、

お弁当箱を持っているではないか。


俺は物凄く驚いた。


何故、
栞先輩は自分に話しかけてくるのかが分からない。


自分と関わると栞先輩に迷惑をかけてしまう。


そう思ったのか……



俺は栞先輩を無視した。


栞先輩は寂しそうにまた仁に問いかける。



「もしかして嫌われたかな?」


俺は栞先輩の沈んだ、その言葉に心を痛める。


自分がされて嫌なことを他人にするなんて、改めてしてはいけないことだと。


俺は持っていたお弁当と箸を置いた。



「すいません。僕と関わらない方が……」



俺は恐る恐る栞先輩に言った。



「え?何で?」


不思議そうに俺を見つめる。



「もしかして知らないんですか?僕の噂」



「え?ああ……知ってるよ」


俺の悪い噂は学年問わず、何故か広まっている。



「え!じゃあ何で?」


俺は驚きながら、栞先輩に尋ねた。



「ホントくだらないよね。もう大学生なのに……幼稚な噂なんか信じて」


栞先輩は正義感が強く、

いじめがなにより嫌いだった。


本当に大学生活が嫌だったが、

栞先輩の優しさに救われる。


栞先輩から少しだけ怒りが伝わって来た。



「え?はい……」



「私は信じてないよ。ただ君と仲良くなりたいだけ」



栞先輩は俺の方を見て微笑む。



今まで一人ぼっちで寂しかったが、

少しだけ気持ちが軽くなり、

本当に嬉しかった。
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