この恋に名前をつけるなら
それから、
栞先輩は一人暮らしの仁の家に、
遊びに来るようになる。
俺の部屋に来ると、
得意の手料理をいつも振る舞ってくれた。
温かみのある手料理。
本当に美味しかった。
いつしか二人は敬語からタメ語に変わり、
距離を縮める。
「このハンバーグ、ふわふわで美味しいね!」
俺は口いっぱいに頬張りながら、
幸せそうに食べる。
「でしょ!パン粉の量で変わるからね」
「へーー!ほんと栞ちゃん、料理上手いよね?」
「ありがと。お母さんに『嫁いく前に料理ができないとダメ』って口酸っぱく言われて来たから!」
照れ笑いを浮かべながら、
栞ちゃんもハンバーグを頬張る。
「そっか、なら栞ちゃんは絶対に良い奥さんになるね」
俺の胃袋は鷲掴みにされていた。
「ふふ、貰ってくれる人がいたらね」
「そりゃあ、いるよ!顔も性格も良くて、おまけに料理ができる。悪いとこなんて一つもないじゃん」
「あれーー?今日はやけに褒めてくれるんだね?ふふ」
栞ちゃんは笑顔で俺の顔を覗き込んだ。
「い、いや、その……」
自分の言った言葉に照れながら、目を逸らす。
「ふふ、可愛い。食べ終わったらゲームしよう」
「うん」
栞ちゃんとは映画を見たり、
ゲームをしたりして遊んでいた。
弟とよくゲームをしていて、
慣れているのだろう。
栞ちゃんはサッカーゲームを一緒にしてくれた。
鳴り止まない声。
「ちょっと!手加減してよ、ふふ」
二人は隣に引っ付き、
テレビの画面に釘付けだった。
笑いあい、楽しそうにする二人……
とても幸せだった。