私の幸せな身籠り結婚
────……苦しい。
颯霞さんの側でこんな感情を抱いたことは初めてという訳ではなかった。
でも、絶対に、今が一番苦しかった。
颯霞さんのその告白が私の胸を鋭い矢で射抜いて、温かすぎて残酷な刃を突き付けられるような、そんな激しい苦しみを覚えた。
この人はどうして、こんなにも薄汚れて戦争ばかりの残酷な世界で、こんなにも無垢で純粋な微笑みを浮かべていられるのだろう───。
「ふ……っ、」
そんな残酷な問いが脳裏を過ぎった途端、私はどうしようも出来ない劣等感に、自分自身を嘲笑うような、そんな笑いをこぼした。
……私とこの人が違うのは、当然のだろう。
誰からも愛されず、ましてや両親からも見捨てられた私。あんなにも簡単に両親から祖国から追い出されてしまった、価値も存在意義なんてものもない私なんかと、颯霞さんを同じにしてはいけなかったんだ。
颯霞さんはきっと幼い頃から沢山の人から無条件に愛されて、可愛がられて、とても大切に育てられてきたのだろう。