私の幸せな身籠り結婚
「……っ、七海、さん」
俺の悲痛めいた声が、誰もいない深い森の入り口でその存在を示すことなく十二月の夜の冷たい空気に溶けていった。
今日、七海さんが刀を振る様子を初めて見ることが出来た。それは俺が想像していたものよりも何倍も綺麗で、幻想的で、やっぱり俺にはこの人しかいない、って本気でそう思ったんだ。
……それなのに俺は…っ、こんな所で一人突っ立って、一体何をしているというのだろう!!
「俺が言ってしまったあの言葉たちが、だめだったのかな……」
自分の情けなさに、柄にもなく泣きそうになる。好きな人一人幸せに出来なくて、こんな男の何が『日本一の軍隊を率いる隊長』なのだ。
こんな俺が、全ての日本国民を幸せに出来るはずがない。昔からとても厳しい親の元で修行と鍛錬を繰り返し、血の滲むような努力をして来た。
生まれた時にはもう自分の将来は決められていて、それが俺の世界を瞬く間に狭めてしまったんだ。
それでも、その頃の俺はこの世界で何かの役に立てるということだけで、もう十分過ぎるほど満足だった。
───それなのに、いつから。