私の幸せな身籠り結婚
Mission6 決め倦ねる決断


 ◇◇◇


左胸、心臓のある位置に白い手袋をした左手を添え、私を敬うかのように(うやうや)しくお辞儀をしたヴィラン皇子。


私はそれに返すことなく、眉をぐっと顰め、厳しい表情のまま、何を考えているのか分からないヴィラン皇子を警戒しながら刀をゆっくりと鞘の中に収める。


ふわっと可憐な華が咲いたように甘い表情で笑い、私と目線を合わせてくる彼は、昔と全く変わっていなかった。


ただ、あの頃よりも背丈も体格もずんと大きくなり、少年から男性へと移り変わっていた。


テッセンの花柄が上品に描かれた花浅葱(はなあさぎ)色の美しく上質な着物を着て、ヴィラン皇子らしい華やかで趣のある薄紅色の羽織を肩から掛けて羽織っている。


『(一体どういうことですか、───ヴィラン皇子)』


彼にも分かるように、私は英語でそう問うた。


きっと私のヴィラン皇子に向ける声は、この動揺を必死に隠すために冷たくて、抑揚もないものになっている。


『(あぁ、どうしてそのような蔑んだ瞳で僕を見つめるのですか。僕は愛する貴女をヴィステリアから迎えに来たというのに……)』

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