私の幸せな身籠り結婚


『(それは……‼今ここですべき話ではないはずですよヴィラン皇子……‼お言葉を謹んでください‼)』


自分の口から放たれたのかと疑うほど、その声は憎悪で溢れていた。

本当にこの人は、昔も今も突拍子なことばかりを口にする。


その気まぐれさに幼少期の私はひどく振り回されていたのを今でもまだ覚えている。


『(あははっ、相当焦っているみたいだね。───…エマ、君らしくないよ)』


残念そうに眉を八の字にする彼を見て、私の苛立ちはさらに募っていく。


『(分かったように物を言うのはお止めください。不快です)』

『(ほんと、随分と凶暴になったね。……これは躾のし甲斐がありそうだ)』


最後の方はボソリと小さく呟かれたせいで聞こえなかった。だけど、良くないことだというのは明確だ。


『(とりあえず、今ここにいるのは危険すぎます。なので、また日を改めていらしてください。ちゃんと、ご連絡致しますので)』


ヴィラン皇子は、矛盾を最も酷く嫌うお方だ。

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