私の幸せな身籠り結婚
何だか分からない寝言を叫び、力尽きたように俺に体を預ける七海さん。俺は取り敢えず七海さんをしっかりと座らせ、車から降車する。
そして右の助手席の方へと移動する。この車は外国製のもので、普通は左が助手席、右が運転席となっているが日本製の車とは左右が反対なのだ。
「七海さん。失礼しますね」
一度断りを申してから、七海さんの膝の裏に腕を回す。
そしてお姫様抱っこをするように、七海さんを抱き上げた。起こすと申し訳ないから、自分で勝手に運んでおこうと考えたのだ。
七海さんはいつまでも穏やかに、眠り続けている。とても穏やかで、優しい表情だ。
すっと通った鼻筋に、綺麗に整えられている眉毛。ぷるんとした柔らかな唇に、長い睫毛。
俺の屋敷に行くためだったのか、化粧もしている。透明のように白い頬。閉じられた瞼にはピンク系統のアイシャドウが付けられている。
はっきり言って、七海さんの顔は俺の好みだ。
今まで女性に興味さえ抱いていなかったのに、七海さんに出会ってからは、自分の好みも明確になっていった。
屋敷の前にそびえ立つ、金で作られた門に近づくとそれは勝手に開く。この屋敷には、色々な魔法のような仕掛けが施されているのだ。