私の幸せな身籠り結婚
今まで、数え切れないほどに婚約者が父上の手で移り変わっていた俺は、嫌悪していた女性のこともあまりよく知らない。
これまでの婚約者とは、口を利くことすら御免だった。
女性は何を好むのか。七海さんにどんなものを贈ったら、喜んでくれるのか。七海さんは俺に甘えてほしいのか。
それとも甘えたいのか。これ程ないほどまでに七海さんに対し、愛という感情を知ってしまった今と前とでは、見える世界が全く違う。
まるで、そう。
天と地の差があるのだ。
「七海さん、……大好きです」
そっと七海さんの耳元で、極限までに低めた甘い声で、そうつぶやいてみる。
そうした後、何だか気恥ずかしくなって七海さんから離れようとすると、突然左手首を掴まれた。
白くて細い綺麗な七海さんの手が、俺の腕を掴んで離さない。そして次の瞬間には、俺は七海さんと同じベッドの上にいた───。