私の幸せな身籠り結婚
今は、それどころではないというのに。
俺は貴女に、寝言の内容を話して欲しいのに。
七海さんはきっと、自分から折れるということを知らない女性だ。それはやましいことからくる行為ではなく、七海さんのプライドが高いからであろう。
「あ、……はい」
今、完全に境界線を引かれてしまったかな……。
俺はそう一人、落ち込む。今日は、俺の両親に七海さんを紹介する日だ。
今はちょうど正午で、約束の時間まではあと少し。
「颯霞さん。私は別に、境界線を引いたわけではありません。ですが誰にも言えない秘密があるということは必ずしも私だけだということはないでしょう?」
まるで俺の心の中を見透かしたような言葉だった。こうやって何度か体を重ねて、七海さんは俺の心まで見透かしてしまえるようになったのだろうか。
「そう、ですね」
何も反論出来ずに俺はただ一度頷いた。だって、今七海さんが言ったことは正論だったから。