私の幸せな身籠り結婚
ただ、そう噂されてきたことは知っている。私はやはり、自分への評価が高い人間なのだろう。そうでなければ、自分の噂もこの耳へは入ってくるまい。
「氷織 縁壱様、氷織 茉吏様。今日は私めを如月家へお呼びいただき誠にありがとうございます」
七海はそう言って、両の手の指先を綺麗に合わせ、深く深く御辞儀をする。凛とした声音。
立派な正装を纏った七海が綺麗な着物の裾を床を擦る趣のある音を奏でる。
それは意図的ではなく、ごく自然に。
「そんなに畏まらなくてもいいんだよ、七海さん」
颯霞さんのお父様である縁壱様は優しい声音でそう囁いて、私の肩に手を置いた。
軍服のよく似合う、立派なお方。かつてはこの日本国を世界的に進化させた軍隊の元総監督であった偉人。
それが、颯霞さんのお父様なのだ。
「七海さんのお話は颯霞から耳にタコができるのではないかというくらい沢山聞いておりましたよ。颯霞の言う通り、本当にお美しい方ですごく驚いておりますわ」