私の幸せな身籠り結婚
そう問い詰めてしまいたくなるほど、私は非情だった。
「七海さん、本当に平気なのかい?もし具合が悪いのなら今日はもう休んだ方がいい」
縁壱様にそう言われ、私は素直に頷いておく。颯霞さんが私の肩を抱いて立ち上がり、縁壱様の書斎を後にした。
去り際、颯霞さんが御両親に「七海さんは俺が寝室に連れて行くから」とだけ伝えて、大きくて重たい扉を閉めた。
◇◇◇
「……あの、颯霞さん。本当にありがとうございます」
私は多分、颯霞さんが私の異変に気付いてくれなければ今もあの場で死ぬほど心地の悪い思いをしていたのだろう。
そして、自分のことをこれでもかと言うほどに妬み、蔑み、忌み嫌っていただろう。
「……はい。あの、七海さん」
「……何でしょう」
「俺は、七海さんが何かを抱えて苦しんでいるのならそれを吐き出せてもらえる人になりたいと思っています」
「……」
「勿論、無理に話す必要はありません。……ただ、本当に七海さんのその悩みが、一人では抱えきれなくなるほどに大きなものとなった時に、俺は七海さんの側にちゃんといるということを分かっていてもらいたいんです」
私の世界は、酷く冷たかった。