私の幸せな身籠り結婚
私の体に纏わりつく漆黒の闇のようなものがどんどん大きく広がっていき、私の体全部を覆い隠そうとした時……────。
……私の名を呼ぶ、優しさに溢れた声が聴こえてきた。
「……七海さん」
私の名は止まることなくその人の口から発せられ続けていて、私の頭を大きくて温かい手がまるで壊れ物でも扱うような手付きで大切に大切に、撫でてくれていた。
……あぁ、もしかしてこの人は、私が目覚めるまでの三日三晩、ずっと名を呼び続けてくれていたのだろうか。休むこともなく、私の側にいてくれていたのだろうか。
閉じた瞳から、涙が溢れて止まらなくなってしまう。一筋の涙が、私の頬を冷たく、だけど儚いほどに綺麗な波紋を残して流れ落ちた。
「愛しています」
私の手を強く強く懸命に握り締める颯霞さん。その人の綺麗な形をした唇から、本当に真っ直ぐに私を想う気持ちが痛いほどに読み取れた。
「……っ、」
……だめよ、七海。
この恋は、この恋だけは、絶対に叶えちゃいけないの───…。