私の幸せな身籠り結婚


颯霞さんの温かさに包まれて、すぐにでも手を伸ばしかけてしまいそうになる。私も太陽の照る颯霞さんのいるそちら側へ行きたいと、思わず願ってしまいそうになる。


颯霞さんの愛に、応えてあげたい───。


本当は、心の中ではそう思っているの。応えてあげたいなんて紛らわしい言葉なんかじゃなく、私はそれに応えたいって、自分の意志を持ってそう思ってしまっている。


「…颯霞、さん……」


今にも死んでしまいそうな、(かす)れた声だった。力無げにその声は震えていて、体中が重い鉛がのしかかったかのようにぐったりとしており、ベッドから体を起こすことが出来ない。


「──…っ、七海さんっ!?良かった、目を覚ました……っ」


力が入らない手に必死に力を入れ、颯霞さんの手を握り返す。颯霞さんは声にならない声を出して、凄く安心したような、だけどとても疲弊してしまっている表情で私の顔を見つめた。


「颯霞さん、私……」


颯霞さんのことがとても心配になり、私はもう一度重い体を起こそうと試みた。だけど、やっぱり手足の感覚がなく、起き上がることさえ出来ない。

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