私の幸せな身籠り結婚


「七海さん、無理をせずに安静に横たわっていてください……っ。ずっと悪夢にうなされていたのですからっ」


あたふたとした様子で必死にそう言う颯霞さん。だけどそんな颯霞さんの方こそ、まるで病人のように衰弱してしまっているではないか。


なぜこの人は、こんな時まで私ばかりなのだろう。


「…っ、颯霞さん、も……大丈夫じゃない、です。病人が病人に看病されても、良くなるものも良くはなりません。……っそれに、私は颯霞さんのお辛そうな顔を見ると、安心して眠ることが出来なくなってしまいます、」


本当に、そうだ。颯霞さんは、きっと自分の限界を知らない。知らな過ぎている。


だからこれまでだって沢山無理をしてそれでも立ち上がってきたような、そんな強い人なのだろう。


颯霞さんに私の思いが伝わってくれるようにと、賢明に視線で訴える。人のためにここまで必死になったのは、生まれて初めてだった。


颯霞さんといると私の気持ちは初めてのことばかりで、収集が付かなくなる。人を心配する気持ち。


私はこれまで自分に対してさえ心配という感情を抱いたことはないのに、颯霞さんのお辛そうな顔が瞳に映ると、じっとしていられなくなるほどに心が乱れてしまう。

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