私の幸せな身籠り結婚
ノア様から渡された任務書の通りに事を行わなければいとも簡単に殺せてしまうような、そんなどうでもいい存在なのだ。───私は。
「ベッドには、七海さんだけが寝てください。俺がそこで寝てしまったら、七海さんがソファに移らなくてはならなくなってしまいます」
颯霞さんは眉を下げて、小さな子供をたしなめるようにしてそう言った。
颯霞さんは、私が本当に言いたいことに、気付いていないのだろうか……。
それとも、わざと気付かないふりをしている?
わざわざこのことを自分の口で伝えないといけないということが、ひどくもどかしい。
私は重い体を起こそうとベッドに肘を立て、大きな枕に背を預けた。颯霞さんはそんな私を心配してこちらに手を伸ばしかけたが、その手を力なく下ろしてしまった。
「……私がこのベッドから移るとは、言っていません。だから、その……二人で一緒に同じベッドで寝ても良いのではないかと思ったのです!」
なぜこんなことを言わせるのだ。弱っている乙女の心くらい、気を利かせて読んでくれたら良いのに……。