私の幸せな身籠り結婚
「あっ…んん、……っぁ」
ベッドがギシギシと音を立てて揺れて、その男女が何をしているのかすぐに分かってしまう。何度も何度も違う角度で落とされる唇。脱がされてゆく着物たち。
カーテンが閉まりきった薄暗い部屋で、私たちは気の向くままに深く深く愛し合った。体中が熱くて、普段よりももっと激しく求め合う。
「七海、さん……っ、愛しています、貴女だけが、俺がこの世界で生きてゆく意味…っなんです」
「私も、颯霞さんのことが好き……っ」
絶対に言ってはいけなかった言葉。この言葉だけは、死んでも言ってはダメだったのに……。
前に抱かれた次の日の朝、私は颯霞さんと同じ気持ちだということに頷きはしたが、ただそれだけだった。
だけど今日は、その言葉を口にしてしまったのだ。
……あぁ、こんなつもりはなかったのに。
最初は、本当にただのどうでもいい人で、赤の他人だった颯霞さんを、今では自分の命にでも変えられる大切な人だと思ってしまっている。
私の一番深い所に、颯霞さんの熱いものが届いた。官能とは、こんなにも良いものなのかと目を見開いた。
もう、後戻りは出来ない。言ってしまった言葉は取り消せない。それでも、私はこの人と幸せになりたいと望んでしまった。