私の幸せな身籠り結婚
Mission4 朧月夜に貴女を想ふ
◇◇◇
七海は孤独だった───。
この世に存在する罵詈雑言は、全て彼女のために在るようなものだった。七海は、本当は日本女児ではなかったのだ───。
これから私が語ることは、全てが私の記憶という訳ではありません。私は、小さい頃の記憶を全て失って、孤独に生きてきたのですから……。私の恩人であるあのお二方が、可哀想な私に全てをお教えして下さったのです。
昔々、ある所にとても美しい容姿をした少女がいました。その少女は、刀剣の才に恵まれ、その浮世離れした雰囲気から人々に尊ばれてきました。
そしてある日、彼女の元に隣国の皇子が婚約を申し出に来ました。
……そう、七海は、北の国の皇女だったのです───。
『エマ・シャーロット姫様、ぜひ僕の婚約者となってくれませんか?』
ヴィラン・ラ・モニーク皇子は、七海に婚約を申し出るため遥々馬車に乗りこの国までやって来ました。
───そう。七海の本当の名は、エマ・シャーロットだったのです。当時、エマの歳は三歳ほどで、ヴィランの言っていることはあまり理解出来ていませんでした。