私の幸せな身籠り結婚
広大な大地を枯れ尽くし、風や氷、岩をも超えるその力の唯一の弱点は、美しい森を鋭い速さで流れていく澄み切った“水”だった。
だが、大地も岩も風も必ずしも炎に負けるという訳ではない。ただ、負ける可能性が大いにあるというだけで、“勝てない”などは決してないのだ。
世界の権力差もまた同じだ。この世に、全てに勝るものは存在し得ない。
なぜ、これほどまで多くの種類の力を持った異能者が今日まで存在し、共存して来れたというのか。
それは、この世の中に絶対的な“強者”は存在しなかったからだ。
だけど、今、この日本国には───。
「颯霞さん、貴方の負けです……っ!!」
恐るべき、強大な力を内に秘めたある国の王と王妃が、存在しているのだ───。
私は颯霞さんの氷に纏われた刀に渾身の一撃を注ぎ込んだ。腕の筋肉の筋全体に血液が一気に流れ込み、常人ではない力が発動される。
私の刀に見事真っ二つにされた颯霞さんの刀は、氷の異能の効力を失い、情けなく地面に横たわっていた。