私の幸せな身籠り結婚


「あぁ……。ははっ、さすが七海さんですね。貴女はやっぱり噂通りとても強い女性です」

「ふふっ、お恥ずかしい限りです。ですが、伊達に“子規堂家長女”をやっている訳にはいきませんからね」


異能者のトップに君臨する者として、ある程度の志や高みを目指す努力がなければすくに崖っぷちへと追いやられて突き落とされてしまうだろう。


「七海さん、もし宜しければなんですが、───今日、俺と一緒に夜狩(よかり)へ行きませんか?」


私をそれに誘う颯霞さんの瞳がキラキラと輝いている。そんな期待に満ちた瞳で見つめられれば、断る選択など出来ないではないか。


「はい、是非」

「ははっ、やった……!」


颯霞さんが時折見せる、その子供っぽい無邪気な姿。私はそんな颯霞さんを見るのも悪くないと思っていた。私しか知らない颯霞さんの意外な一面。


それは一生、私だけにしか見られないものだと、今は本気でそう思いたかった。


◇◇◇


夜の気配が漂う赤々とした夕焼け空が刻々と闇に包まれ、残照(ざんしょう)に染まっている。

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