私の幸せな身籠り結婚
私と颯霞さんはそんな夕映えの空の下で、黄昏時が過ぎるのをただゆっくりと、静かに息を潜めて待っていた。
もうすぐで、異能者以外の普通の人間が外で行動出来る時間が終わる。それは、悪鬼や異形、妖魔が姿を表すということを指し示していた───。
私たちが今から行おうとしている夜狩というのは、よく中国の物語に出てくる言葉なのだが、その意味は屍や悪霊を狩る修道士たちの生業を表している。
一つの仙門、(ここでは一つの異能家とする)が一方的にそれらを狩り尽くすのは無礼な行為とされ、人間としての善良な心構えに背く行いである。
だから私たち異能者は常に周りに気を配り、妖魔や異形を分け合わなければならないのだ。
多くの異能家がそれを狩りたがる理由は、多大なる力を持ち合わせている異形や悪鬼、妖魔を狩るだけで、大いなる名誉と功績を残すことが出来るからだ。
もちろん、弱小のそれらも大量に狩ることが出来れば、それはこの日本国への献身となり、それに値するだけの功績を帝から頂けるのだ。
強い力を持ち合わせた者は、当然上へと上り詰めることを望む。これがいわゆる異能界での“成り上がり”だ。