私の幸せな身籠り結婚
意表を突かれたような、そんな驚いた顔をしていた。
私は自分のことを、いつも計算高くて、自分の本当の感情を他人に見せることなく、血も涙もない冷酷な人間だとしか思っていなかった。
私“らしい”と思うところなど今まで何一つ思い浮かべることさえ出来なかったから、私はきっと颯霞さんのさっきの言葉に疑問を覚えてしまっているのだろう。
他人よりも、自分のことだけを優先してしてきた行動や言動。
自分と関わりを持つ人にさえ優劣を付けて、“この人は私の役には立ってくれない”と思ったらすぐに切り捨てたし、“この人なら今後私の役に立ってくれるだろう”と思い、側に置いてきた。
颯霞さんはしばらく考え込むようにして私を見続け、何かに納得したようにゆっくりと一つ頷いた。
「───七海さんにもいつか、本当の意味で自分を理解出来る日が来れば良いですね」
颯霞さんは陽だまりのような朗らかで優しい笑みを顔いっぱいに浮かべて、颯霞さんのその言葉にまたもや悩んでしまっている私を見つめて口元を緩めた。
「そうだと、良いんですが……」
きっと、颯霞さんの言う“その日”は決して訪れることはないだろう。
私は今も颯霞さんを騙し続けている自分自身が大嫌いだし、こんなことをしてだらけてばかりでノア様から託された任務を遂行できないままでいる自分の、祖国への罪悪感は拭おうとしても拭いきれないほどに大きなものだ。