私の幸せな身籠り結婚


「……七海さんはやっぱり、綺麗な人です」

「───え?」


心臓がドキリ、と、とても嫌な音を立てた。


夜闇に溶け込んでしまった颯霞さんの横顔を見開いた目をして見つめながら、私は自分の胸の鼓動を誤魔化すことが出来なかった。


颯霞さんが今から言わんとしていることは、私にとっては絶対に言って欲しくない、そして聞きたくない言葉だと、自身の鋭い直感が働いたからだ。



「……七海さんは決して他人には見せない秘密を抱えていて、自分の良ささえも理解出来ていない。

まるで生まれたての赤ん坊のように、良くも悪くも世界の(けが)れを知らな過ぎている。

とても寡黙で、こんなにも美しくて綺麗な女性に出逢ったのは、あの日が初めてだったんです」


颯霞さんの瞳が夜闇の中でも良く見える熱を帯びて、私を見つめるそれが尊敬と抑えきれぬ好意に満ち溢れているのが分かって、どうしようもなく胸の締りが強くなる。


あの日とは、きっと私たちが初めて出会ったお見合いの日のことだろう。

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