そして消えゆく君の声
「日原さんは家庭環境が秀二を不幸にしてると思ってるんだろうけど……いや、間違ってないけどね、全く。俺に言わせれば、あいつはどこかでそれを望んでいる」

「まさか、だってあんなひどい目に遭って……」

「まあ、洗脳されてるか自己防衛入ってるとかでもない限り有りえないよね、普通は。でも秀二は違う。どういうわけか、あいつは自分が罰されるべきだと思っている」


 淀みなく語られる言葉に頭がぐらついてくる。


 事情って何?
 黒崎くんが不幸を望んでいる?
 罰されたいと思っている?

 そんなはず……でも、一緒に暮らしている要さんがそう言っている。


 増え続ける謎に痛む頭と、胸にぽっかりと穴が空いたようなやりきれない気持ち。

 でも、続く言葉はもっと私を打ちのめすものだった。


「つまり、何を言いたいかというと」


 ぴし、と耳に響いたグラスの氷が割れる音。かわいた唇からは、いつの間にか笑みが消えていた。


「秀二は、無理だよ」 

「……無理……?」

「うん、きみにしてあげられることはない」
 
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