そして消えゆく君の声
 鼓動が跳ねた。

 真っ向から告げられた言葉。胸が引き絞られるように痛んで、息苦しさが広がっていく。


 できない。何も。


「……わ、たし、何かできると思ってたわけじゃ……」

「へえ、横でへらへら笑っていられれば満足とか?」

「そうじゃないですけど……」


 ソファに身を沈めた要さんの薄い唇が、皮肉っぽく持ち上がる。


「日原さんはいい子そうだから忠告してあげるけど、今のまま寄りそっててもつらい思いするだけだよ。だってさ、何かしたいから来たんでしょ?今日、ここに」

「………」

「でも、結局のところきみには何もできない。で、それを望んでいるのは秀二自身。どうせ知っているだろうから言うけどさ、あいつは征一に何をされても絶対に抵抗しないんだ」

「……え……」


 初めて知った事実に、手の中のグラスを落としそうになる。

 まさか、と思った。だってあんなにひどい傷なのに。黒崎くんは悪いことなんてしていないのに。


 抵抗しないなんて、なんで、そんな。


「これからずっと、日原さんは自分の無力感に苦しむ。病気にかかった人間に、わけもわからず水だけをあたえ続けて幸せ?」

「でも、でも…黒崎くんは……」

「あいつは、救いなんて求めてない。というか、余計な世話なんじゃないかな。そういう善意は」
 
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