そして消えゆく君の声
挿話 ある幸せな夢
要さんと話をした晩、私は不思議な夢を見た。
とても鮮明だったのに、目が覚めた瞬間ぽろぽろと崩れるように消えていった夢。
とても幸せそうだったのに、胸に深い痛みを残していった夢。
今はもう、おぼろげな輪郭しか覚えていない夢。
その夢には、二人の男の子が出てきた。
「……それでね、動力飛行機を発明したライト兄弟は、ずっと二人で研究をしていたんだって」
おもちゃの飛行機が宙を切る。
小さな手に握られた赤い機体が、陽の光を浴びてぴかぴかに光っている。
頭上には風に煽られて揺れる木々と、抜けるような青空。太陽は白く輝いて、足元の池に絶えずきらめきを反射している。
向日葵。
蝉の声。
ほんのり熱を帯びた空気。
平凡で、けれど幸せな夏の一日。
「大人になってもずっと一緒だったって」
いいなあとつぶやいたのは、大きな帽子をかぶった男の子。爪先立ちで、腕をめいっぱい空に伸ばして、手の中の飛行機を眩しそうに見つめている。
「俺も飛行機に乗れたらいいのに。これが本物なら、どこへでも行けるのに」
ね、と横を向いてとなりに立つ男の子を見る。
地面に並ぶ二つの影。
並んで立つ二人の子ども。
自然に肩を寄せ合った二人は、きっと兄弟だ。
とても鮮明だったのに、目が覚めた瞬間ぽろぽろと崩れるように消えていった夢。
とても幸せそうだったのに、胸に深い痛みを残していった夢。
今はもう、おぼろげな輪郭しか覚えていない夢。
その夢には、二人の男の子が出てきた。
「……それでね、動力飛行機を発明したライト兄弟は、ずっと二人で研究をしていたんだって」
おもちゃの飛行機が宙を切る。
小さな手に握られた赤い機体が、陽の光を浴びてぴかぴかに光っている。
頭上には風に煽られて揺れる木々と、抜けるような青空。太陽は白く輝いて、足元の池に絶えずきらめきを反射している。
向日葵。
蝉の声。
ほんのり熱を帯びた空気。
平凡で、けれど幸せな夏の一日。
「大人になってもずっと一緒だったって」
いいなあとつぶやいたのは、大きな帽子をかぶった男の子。爪先立ちで、腕をめいっぱい空に伸ばして、手の中の飛行機を眩しそうに見つめている。
「俺も飛行機に乗れたらいいのに。これが本物なら、どこへでも行けるのに」
ね、と横を向いてとなりに立つ男の子を見る。
地面に並ぶ二つの影。
並んで立つ二人の子ども。
自然に肩を寄せ合った二人は、きっと兄弟だ。