そして消えゆく君の声
 黒崎くんが話さないのはいつものことだし今さら驚いたりはしないけど、戸惑ったり、もどかしく感じることはある。

 もっと思ったことを口に出してもいいのに。そっちのほうが、楽なはずなのに。


 心のなかでちょっぴりため息をつきながらもう一度肩をなぞると、指先に毛先が触れた。


 …………毛先?


 あ。
 と思い出したのはさっきの幸記くんの言葉。


『髪長くなったし……女の子っぽくなった、って言うか』


 はにかみながら微笑んでいた幸記くんと、何も言わずに私を見た黒崎くん。

 二人の表情は正反対って言ってもいいくらい違ったけど、二組の目に映っていたのは同じもの、つまり、私の肩……より少し伸びた髪だったわけで。


 それって。 
 それって、幸記くんの言葉を、黒崎くんが。


(……いやいやいや! それはちょっと希望的観測すぎるから)
 
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