そして消えゆく君の声
「不思議だね。夜なんて息苦しくて全然好きじゃないのに、今は気持ちが落ちつく気がする」


 独り言のように呟いた幸記くんが、細い指を前へと伸ばす。

 何かを求めるように宙をすべった白い残像。


 その瞬間。
 目の前を光の帯が走った。



「あ………」



 幻かと思うような一瞬のまたたき。

 思わず目をしばたかせると、まるで消え入る光が暗闇を開く鍵だったかように
 
 川辺で
 草むらで
 岩のすきまで

 数えきれない程の光がいっせいに舞い始めた。
 
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