そして消えゆく君の声
 振り返った顔は、切れ長の目のふちは、照明のせいなんて言葉じゃごまかせないほど赤く染まっていた。


「………ぉ、」


 初めて見た、こんな黒崎くん。

 上気した顔を見ているとこっちにも熱が伝導してきて、耳元がじわじわと熱くなるのを感じた。


「………思いま、せん……」


 驚きのあまり、ついたどたどしい口調になってしまったけど。逃げ出したい気持ちは消えなかったけど。

 きつくきつく握りしめられた部屋の鍵に、緊張していたのは私だけじゃないんだってすごく安心してしまった。


 良かった。

 はあ……本当に、良かった。


 一気に力の抜けた肩を、後ろからポンと叩かれる。振りかえると、


「二人とも、そんな大きな声出したら人が来るよ」


 今までだまっていた幸記くんがシイ、と人差し指をたてた。


「桂さんからしたらこんなところに泊まるのは怖いだろうけど、足の様子も見なきゃいけないし」


 ね?と、上目遣いでにっこり笑う顔は可愛いのにとても大人びていて、くしゃくしゃになった心を優しく撫でるようで。


「…………」


 年上二人は、怒られた子供のようにおとなしくうなずく他なかった。
 
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