そして消えゆく君の声
白い部屋、赤いガーゼ
朝のやり取りから数時間後。予感は的中した。
「……すみ、ません……」
ひしゃげてつぶれそうな声が、カラカラの喉からしぼり出される。
昼前の気だるさがただよう校舎内。
血の気の引いた指でなんとか保健室の戸を開いて、私は布張りのソファへと倒れこんだ。
ぐるぐる回る世界。
力が入らない足。
遠く響くピアノの音……あの曲なんだっけ。知っているのに思い出せない。
(……きもちわるい)
正面の窓からは、真夏のような陽射しが降り注いでいる。
その容赦ない暑さに私がめまいを起こしたのは今から十数分前、バレーボールのネットを張っていた最中だった。
とつぜん目の前が真っ暗になって、立てない、と思った時にはもう、その場にすわり込んでいた。
覚えているのは乾いた地面の色と、かけ寄ってきた雪乃の細い足だけ。
(……雪乃、心配そうだったな)
ほんの数時間前に気をつけるって言ったばかりなのにこんなことになるなんて、自分で自分が情けない。
先生に声をかけようと薄目をあけて奥を覗いたけど、いつも白衣の後ろ姿が見える椅子はからっぽで、水色のカーテンだけがゆれていた。
生徒も、私以外にはいないみたいだ。