そして消えゆく君の声
 私たちは、長く伸びた道を並んで歩いた。

 幸記くんの手には、ラムネのガラスびん。
 水をはったバケツで冷やされているのを見て、どうしてビー玉が入っているのかと不思議そうにしていたから。

 袋に入った綿菓子のすごい量におどろいたり、どんどん金魚をすくっていく子供に感心したり、お面屋のおじさんに三人兄妹と間違えられたり。

 ……あの時の黒崎くんの顔面白かったな。


 眩い陽射しもぜんぜん不快じゃなくて、前へ前へと足が進んだ。




 順に露店を回っていって、最後に辿りついたのはおもちゃのアクセサリー屋さんだった。

 お姫様の絵が描かれたどこかなつかしい感じの看板の横には、ガラスやプラスチックのアクセサリーが並んでいる。

 ハート型にカットされた真っ赤なルビーに、指からはみ出そうなほど 大きな真珠。今日の空みたいに透き通ったサファイアは、王冠みたいな台座の上で輝いている。 


「かっ、かわいいっ!」


 歓声を上げて座りこんだ私に、黒崎くんは呆れ返った顔で。


「ガキじゃあるまいし」

「ガキでいいもん。こういうの大好きだったんだけど、すぐ失くしちゃうからって買ってもらえなくて」


 小さなころの私は大切なものを隠すっていう動物の習性みたいなクセがあって、お気に入りのアクセサリーや髪飾りを色んなところに隠しては失くして、お母さんに怒られていた。
 
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